バンダイナムコの「稼ぎ方」を数字で読む ― 売上1.3兆円の中身をのぞいてみた
「バンダイナムコ」と聞くと、ガンプラを思い浮かべる人もいれば、鉄拳やエルデンリングを思い浮かべる人もいる。人によって連想するものがまるで違うのが、この会社のおもしろいところだ。おもちゃの会社なのか、ゲームの会社なのか。答えは「どっちも」で、しかもそのバランスがかなり絶妙にできている。
公式のIR資料をもとに、事業別の売上構成をのぞいてみたら、この会社の「稼ぎ方」がけっこうきれいに見えてきたので、軽くまとめてみる。
まず全体像 ― ついに売上1.3兆円
直近の2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の通期決算で、連結売上高は1兆3,482億円。前期比+8.6%で、売上・利益ともに過去最高を更新した。営業利益は1,895億円(+5.2%)、最終利益は1,406億円(+8.8%)。文句なしの好決算だ。
ちなみにその前の2025年3月期が1兆2,415億円だったので、1年で1,000億円くらい積み増した計算になる。規模の桁がひとつ違う。
事業は5つ、でも実質「2強」
バンダイナムコの事業は大きく5つのユニットに分かれている。2026年3月期の内訳(セグメント間取引消去前)はこんな感じ。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| トイホビー | 6,740億円 | 約47% | +12.9% |
| デジタル | 4,766億円 | 約33% | +4.6% |
| アミューズメント | 1,527億円 | 約11% | +8.0% |
| 映像音楽(IPプロデュース) | 955億円 | 約7% | +5.3% |
| その他 | 390億円 | 約3% | +7.6% |
見てのとおり、トイホビーとデジタルの2つだけで全体の約8割を占める。残りのアミューズメントと映像音楽は、規模でいえば脇役ポジションだ。
おもしろいのは、この2強がきれいに「棲み分け」できていること。トイホビー(=旧バンダイの得意分野)はガンプラ・フィギュア・カード・カプセルトイといったモノづくり。デジタル(=旧ナムコの得意分野)は家庭用ゲームとスマホゲーム。ぶつかり合わず、補い合っている。経営統合した2社の強みが、20年経っても食い合わずに共存しているというのは、地味にすごい。
ここからが本題 ― 「売上」と「儲け」は別物
売上構成だけ見ると「トイホビーとデジタルが2大柱」で話が終わりそうだが、営業利益(セグメント利益)まで見ると、景色がちょっと変わる。
| セグメント | セグメント利益 | 前期比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| トイホビー | 1,269億円 | +24.2% | 約18.8% |
| デジタル | 567億円 | −17.3% | 約11.9% |
| 映像音楽 | 122億円 | +3.4% | 約12.8% |
| アミューズメント | 101億円 | +19.8% | 約6.6% |
| その他 | 28億円 | +68.6% | 約7.2% |
ポイントは2つ。
① トイホビーが「稼ぎ頭」でもある
売上で約47%のトイホビーは、利益では全体の約6割を稼いでいる。営業利益率も約18.8%と5事業の中で断トツ。しかも前期比+24.2%とぐんぐん伸びている。大人向け(ハイターゲット)のガンプラやフィギュア、一番くじ、それに新作「Tamagotchi Paradise」あたりが効いたらしい。会社自身も「今の成長ドライバーはトイホビー」と言い切っている。売上でもトップ、利益でもトップ、この事業がグループの屋台骨だ。
② デジタルは売上を伸ばしつつ、利益は減った
デジタルは売上こそ+4.6%だが、セグメント利益は−17.3%と逆行している。理由はシンプルで、前年に『エルデンリング』の大型DLCや『ドラゴンボール Sparking! ZERO』といった特大ヒットが重なっていた反動。ゲーム事業は「その年にどんなタイトルを出したか」で利益が大きくブレる。ここがトイホビーとの性格の違いだ。モノづくりは積み上げ型、ゲームは水物、とも言える。
売上の派手さと、実際の儲けやすさ・安定感は、必ずしも一致しない。ここが数字を追う醍醐味だと思う。
全部つないでいるのは「IP」
じゃあなぜこんなに幅広い事業を回せるのか。答えはIP(キャラクターや作品といった知的財産)だ。
グループ全体のIP別売上を見ると、DRAGON BALLが約1,900億円、ガンダムが約1,500億円、ONE PIECEが約1,400億円と、この3強が突出している。とくにガンダムは足元で四半期あたり約600億円規模、年換算で2,000億円超まで育ってきた。
大事なのは、ひとつのIPが1事業で完結していないこと。ガンダムなら、プラモデル(トイホビー)、ゲーム(デジタル)、劇場アニメ「GQuuuuuuX」(映像音楽)、体験型施設や業務用ゲーム(アミューズメント)と、全事業を横断して稼ぐ。映像音楽ユニットは売上規模こそ小さいが、ここで新しいIPや新作アニメを生み出し、それが他事業の物販やゲームを潤す「種まき」の役割を担っている。規模の数字だけ見て「小さいから重要じゃない」と判断すると読み違える部分だ。
これがバンダイナムコの言う「IP軸戦略」の実態で、セグメントをまたいで機能しているのが数字からも見て取れる。
ちょっと気になる、来期の弱気予想
好決算の一方で、翌2027年3月期の会社予想は売上1兆3,500億円(ほぼ横ばい)、営業利益1,850億円(−2.4%)と、やや弱気だ。関税や世界情勢の不透明感、それにゲームのタイトル編成次第で利益がブレる構造を、会社自身も織り込んでいるのだろう。
とはいえ、稼ぎ頭のトイホビーが好調で、海外売上比率(約3割)にもまだ伸びしろがある。中期計画でも「もっとひろげる(エリア・カテゴリー拡大)」を掲げているので、そのあたりが今後の見どころになりそうだ。
まとめ
- 売上は約1.3兆円。トイホビーとデジタルの2強で約8割。
- ただし利益で見るとトイホビーが約6割を稼ぐ稼ぎ頭。営業利益率も約19%と別格。
- デジタルはヒットタイトル次第で利益がブレる水物ビジネス。今期は反動減。
- 全部をつないでいるのがガンダム・ドラゴンボール・ワンピースといったIP。1つのIPを全事業で回すのが強さの源泉。
おもちゃ屋さんに見えて、実は「IPを軸に、いろんな形で何度も稼ぐ会社」。数字を並べてみると、その設計思想がけっこうくっきり見えてくる。
※本記事の数値は、バンダイナムコホールディングスの公式ファクトブック2025および2026年3月期通期決算(2026年5月13日発表)、同第3四半期決算資料に基づく概算です。営業利益率などの比率は各セグメントの公表値から筆者が算出したもので、端数処理の関係で合計が一致しない場合があります。投資判断は各自の責任でお願いします。
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