Q:日本郵政はなぜサービス業に分類されるのですか?
結論から言うと、「サービス業」という分類は東証33業種分類上の形式的な区分としては筋が通っていますが、事業実態を表しているかという点では議論の余地がある、というのが実情です。
なぜサービス業になっているのか
東証の33業種分類は証券コード協議会が定めるもので、日本郵政(6178)は東証プライム上場のサービス業に区分されています。日本郵政はグループの持株会社で、主要子会社に日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命を持つという構造です。郵便・物流、銀行、保険、不動産と複数の業種にまたがるコングロマリット型の持株会社であるため、特定の業種(銀行業や保険業)に割り当てず、包括的な「サービス業」に置かれたと理解されています。また、傘下のゆうちょ銀行(7182)は銀行業、かんぽ生命(7181)は保険業として別途上場しており、親会社まで金融系業種にすると分類が重複的になるという事情もあります。
一方で実態を見ると、連結事業の構成は郵便・物流18%、銀行22%、生命保険54%などと、収益の大半は金融(銀行・保険)です。さらにグループ収益は銀行業・生命保険業の比重が大きく、金利・株式・為替など市場環境の変化に左右されるため、株価特性としても金融株に近い動きをします。実際、日経の業種分類では同じ日本郵政が「保険」に分類されており、分類機関によって見方が分かれています。
まとめ
つまり、「サービス業」は東証分類のルール上の整理としては成立しているものの、投資分析の観点では「実質的には金融持株会社」と捉えるほうが実態に近い、というのが一般的な見方です。業種分類はあくまで便宜的なラベルなので、セクター分析やスクリーニングをする際は、東証33業種だけでなく日経業種分類やセグメント別の収益構成を併せて見ることをおすすめします。
Q:生命保険事業の比率が高いのはなぜでしょうか?
事業の内訳でよく引用される「生命保険54%」という数字は、売上高に相当する「経常収益」の構成比です。生命保険がグループの中で特別に儲かっているとか、急成長しているという意味ではありません。この比率が大きくなるのは、主に次の二つの理由によります。
第一に、生命保険業は業態の性質上、売上にあたる金額が膨らみやすいためです。生命保険会社の売上には、契約者から毎年受け取る保険料に加えて、預かった資産を運用して得る利息や配当などの運用収益が丸ごと含まれます。かんぽ生命は約60兆円という国内有数の規模の資産を運用しているため、この二つを合算した金額は、郵便や銀行の売上と並べるとどうしても大きく見えます。
第二に、比較対象となる他の事業と売上の計上方法が異なるためです。たとえば銀行業の売上(経常収益)は貸出や運用で得た利息収入などが中心で、預かっているお金そのものは売上に含まれません。郵便・物流業も、受け取った料金がそのまま売上になるシンプルな構造です。業態ごとに売上の「かさ」の付き方が違うため、単純に構成比を並べると保険が突出して見えるのです。
一方、儲け(利益)で見ると景色は変わります。生命保険事業の利益率は低く、グループの利益の大半はゆうちょ銀行が稼いでいます。実際の事業規模の面でも、かんぽ生命は2019年の不適切募集問題以降、保有契約が減少傾向にあり、拡大局面にはありません。
まとめると、「生命保険の比率が高い」のは事業が大きく成長したからではなく、保険という業態の売上の数え方が大きく見えやすいから、というのが答えになります。グループの実力を測るなら、売上構成比よりも利益の内訳で見るほうが実態に近い、という点もあわせて押さえておくとよいでしょう。
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